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顧客満足度の向上を目指す – 中小企業が実践すべき取り組み

顧客満足度の向上を目指す―中小企業が実践すべき取り組み

中小企業経営の中で、近年「顧客満足度(CS: Customer Satisfaction)の向上」という言葉がよく聞かれるようになりました。しかし、この言葉が掛け声だけに終わり、実態は、費用がかかる割に効果が出ない、逆に収益を悪化させるという理由で、実行を伴わないケースが多いようです。

そこで、CSとは何かを分析し、企業業績にとっての費用対効果と、CS向上に向けての取り組み方法をご紹介します。

CS(顧客満足度)とは何か

CSという考え方は大企業ではかなり普及し、実際に、その向上に取り組んでいる企業が多いと思われます。しかし、中小企業の場合、そのイメージが理解されていない、あるいは、何となく分かっているが、経営の中に具体的な手法として取り組んでいないところが圧倒的に多いようです。

そこで、まず、CSの概念やそのイメージを具体的に説明します。

CSは文字通りお客様に満足してもらうということですが、その満足度は、顧客の期待感と裏腹の関係にあります。顧客の期待感が高ければ、満足度を充足させるためには、それ相当のサービス、商品価値が必要となります。逆に、期待感がそれほどでない場合、少しのサービス、商品価値で顧客は満足します。

つまり、CSは顧客の期待感によって、得られる満足度のレベルが異なってくるのです。一般的に、顧客の期待感と満足度の関係は4通りの状態が考えられます。

1.もともとあまり期待していないので、得られた商品・サービスの満足度も小さい。

2.期待はしていなかったが、商品・サービスには問題があり、不満が残る。

3.期待していたものと、ほぼ同等の満足が得られた。

4.期待していた以上の満足度が得られた

以上の4通りの期待と満足との関係を、具体的な飲食店の例で見ると、より分かりやすくなると思われます。

1.の満足度が小さい場合、そのお店には1度きりで、2度、3度行くことはない。お友達や知り合いに紹介することもしない。

2.不満が残る場合、そのお店に2度と行かないだけでなく、口コミでも悪い印象を拡散する。場合によっては、お店に対し、あるいはインターネットで、クレームをつける。

3.ほぼ同等の満足を得られた場合。この場合は、「機会があれば、行ってみよう」「別にいかなくてもよい」という顧客で、それなりに定着する場合もあれば、離れていくこともある。

4.期待した以上の満足を得られた場合、「また行って見よう」「知人に紹介しよう」いう気持ちになり、そのお店の固定客になる可能性が高く、新規の顧客獲得につながります。

顧客の期待を想定する

顧客の期待と満足度との以上のような関係から、企業がCSを向上させるには、顧客の期待すなわちニーズを想定、把握することが重要になります。顧客の期待、ニーズを知るには、アンケートによる記入が一番簡単ですが、業種によっては不可能な場合もあります。

営業マンや営業担当社員がいる場合は、店頭や電話で商品・サービスについての顧客の意見を聞くことができます。また、小売業などでは、POS(販売時点情報管理システム)レジやポイントカードなどの情報から、顧客の「年齢層」「性別」などの属性、売れ筋商品の傾向などを把握できます。そこから、顧客のニーズをある程度把握することが可能です。

CS(顧客満足度)は利益増大に結びつくか

中小企業の社長さんから、よく、こんな言葉を聞きます。「お客様に満足いただける商品やサービスを提供すれば、売上が増えることは分かっている。しかし、それではコストがかかり過ぎ、利益どころか赤字になってしまう」

企業経営である以上、確かに費用対効果は重要です。効果をあげるために多くのコストをかけたのでは、本末転倒です。しかし、費用対効果を考える際に重要となるのは、CSの観点です。例えば、食品メーカーのお客様相談室の電話対応で、相談スタッフの人数が少ないため、顧客から電話がつながりにくいという苦情が出たとします。その場合、人数を増やして対応することは簡単ですが、当然、人件費コストがかさみます。

その場合、ポイントになるのは、電話のつながりやすさよりも、電話応対の中身です。相談室のスタッフに、顧客を満足させるためのサービスはどうあるべきかの教育を行い、意識改革を行うことがより重要です。電話が少々つながりにくかったとしても、意識改革の後の電話応対では、顧客の印象はずいぶん違ったものになるはずです。

顧客に満足してもらうコストは、実務上の支出の増加ではなく、企業にどれだけの利益をもたらすかという総合的、長期的観点から考慮する必要があります。それが、結局は企業への信頼性、ブランドイメージの向上につながるのです。

CS(顧客満足度)向上への取組方法

CS向上のための取組は、企業ごとに、あるいは、業種、業態によって、それぞれ異なります。そのため、それに応じた対応が必要になります。ここでは、サービス業、製造業、小売業に分けて考えて見ます。

サービス業の場合

顧客に提供するサービスは大きく分けて二つあります。ひとつは商品サービス、2番目は人的サービスです。サービス業の中には、美容・理髪店のような人的サービスが中心の業態もありますが、レストラン、飲食店などは、商品サービスが重要な要素となります。

レストランの場合、最大のポイントは「料理の味、鮮度」という品質になります。品質でCSがマイナスになるということは、レストランにとって、大きな痛手です。

先の「CSとは何か」で述べた「期待と満足との4通りの関係のうちの2番目の状態つまり、不満が残る状態」です。不満だけならまだしも、顧客からクレームがつけば、レストランにとっては致命傷になります。

料理などの商品の品質には、安全・安心を含めた細心の注意が必要です。そのための調理に関する研修・教育はもちろん、専門家による講習、セミナーの受講なども重要になります。

人的サービスが重要な役割を占める場合、これは、飲食店でも同じですが、タクシー会社のようなサービスそのものに大きな差がない場合は、ドライバーの対応の良し悪し、接客態度が重要な要素となります。

こうした人的サービスのウエートが大きい業態の場合はサービスを提供する従業員、スタッフに、顧客満足の理念を浸透させ、サービスの技術を磨くとともに教育・研修を繰り返し行うことが不可欠です。

製造業の場合

最終消費者に直接製品を販売しない製造業の場合は「製品そのものの品質」が非常に重要になります。消費者に購入意欲を高める製品の魅力と同時に、買った後のサービスつまりアフターサービスなどの2次的な対応がより重要になります。これは、自動車や住宅などの大きな商品ではとくに大切です。

例えば自動車の場合、品質の良し悪しは、トラブルがなく、耐久性をいかに維持できるかがポイントになります。仮にトラブルが生じた場合、販売店やショールームのスタッフが、整備部門と連携して迅速に対応することが重要です。

住宅でも同様です。特に住宅の場合は、メンテナンスなどのアフターサービスが顧客の満足度を高める大きな要素となります。メンテナンスは有料の場合もありますが、新築住宅などでは、5年なり10年の期間を区切って無料で点検と補修を行うことも、顧客の信頼度向上につながります。

小売業の場合

小売業の場合、さまざまな商品を扱っており、顧客は、商品一つひとつを吟味するというより、商品の品揃え、立地、価格を総合的に判断して購入します。これらの要素は、直接顧客の満足度を高める度合いは小さいといえます。その上で、顧客が固定客となるか、あるいは、他の店に流れるかは、店の雰囲気、接客態度、従業員のサービスが決め手となります。つまり人的サービスです。

立地や品揃え、価格に関しては経営者の選択の幅は狭いのですが、人的サービスは、CSの重要性に対する認識を高めることで、他店との差別化を図ることが出来ます。

具体的には、店内のディスプレイ、清潔感に常に注意を払い、顧客が気持ちよく買い物を出来る雰囲気を心がけます。接客の姿勢も無視できません。親切な対応は言うまでもありませんが、顧客の求める商品をスピーディに探したり、返品、交換の申し出にも快く応ずることが大事です。そうしたお店には、顧客は足繁く通うようになるでしょう。

まとめ

近年、経済は、生産性・効率性重視から、サービス経済化の傾向をますます強めています。その場合に重要性を増すのが最終消費者による顧客満足度の向上、すなわちCSを意識した経営です。

CS向上のための手法は、企業の業種、業態によって異なりますが、何よりも重要なのは、CSに対する従業員の理解を深めるとともに、経営者自らがCSを経営理念の中に取り込んでいくことでしょう。それによって、企業の信頼度が高まり、業績向上の成果につながることになります。

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