経営

提案型営業の実践法 – 顧客の問題を解決し、受注力を上げる

提案型営業の実践法―顧客の問題を解決し、受注力を上げる

IT(情報技術)の進展によって、ソリューションという言葉が、頻繁に聞かれるようになりました。ソリューションとは、ビジネスやサービスの抱える課題の解決策を言います。IT業界では、そのためのツールとしての情報システム全般を指す場合が多いようです。

実は、このソリューションという言葉が、企業の営業戦略としても使われ、普及しています。ソリューション型営業はすなわち課題解決型営業であり、提案型営業と呼ばれることもあります。

従来の企業の営業は、売込み型営業が主流で、商品・サービスを出来るだけ多く売り上げる営業マンが優秀とされました。もちろん、営業にとって、売上の拡大は重要な経営目標のひとつに違いありません。しかし、それだけでは、企業の信頼度、ブランドの向上には結びつきません。

提案型営業によって、顧客から信頼される良好な関係を築くことが重要です。

そこで、提案型営業とは具体的にどんな営業のやり方なのか、顧客から信頼を得る関係を築く方法は何か、などを見ていきます。

モノが売れない、モノを買わない時代

最近の景気はアベノミクス効果もあり、徐々に回復基調にありますが、一般消費者のサイフのヒモはいぜん固いようです。消費税や物価上昇などで、家計防衛の姿勢が強いうえ、企業の側も、コスト削減のため、什器や備品などの購入を控える傾向にあります。つまり、家計も企業も、必要最小限のものしか買わなくなっているのです。

営業活動の側にしてみれば、非常に厳しい環境といえます。従来の営業のやり方は、多くのパンフレットを持ち歩き、自社製品やサービスを積極的に売り込む、売込み型セールス、営業が中心でした。モノやサービスが現在のように、いきわたっていなかった時期には、売込み型営業がそれなりに効果をあげることが出来たのです。

ところが、近年は、あらゆるモノやサービスがいきわたり、よほど消費者やユーザーに魅力のある商品でない限り、売り込みは成功しません。営業マンのパンフレットだけでなく、新聞、テレビの広告、通販のパンフレットなど、身の回りには情報が氾濫しています。消費者だけでなく、企業の側にも同じことが言えます。

例えば、事務機器などのOA機器を購入する場合、購入する企業の側が、インターネットなどによって、簡単に情報を入手し、各社の製品を比べることが出来ます。営業マンが企業に出向いて、自社製品を売り込む余地は大幅に狭められています。

厳しい営業環境を乗り切る戦略として登場

営業にとって、現在は厳しい環境が続いているといえます。そうした厳しい環境を乗り越える新たな営業戦略として登場しているのが、課題解決型営業あるいは提案型営業と呼ばれる手法です。

提案型営業のポイントは、モノを売るのではなく、課題の解決策、すなわちソリューションを売る点です。顧客である会社は、社内でさまざまな問題を抱えています。あるいは、具体的な問題点として把握していなくても、いくつかの悩みを抱えているはずです。そうした問題点、悩みを、顧客とともに考え、その解決策を提案するのが、提案型営業です。

自社製品のパンフを広げることはNG

提案型営業でまず優先すべきは、自社製品やサービスを売り込むことでなく、顧客の抱える悩み、問題の解決策を提案することです。

たとえOA機器の売り込みであっても、OA環境の構築で顧客が困っている場合、その事情を聞き出し、原因や顧客が従来とってきた対策などについても把握します。その上で、顧客の悩み、問題を解決できるOA機器の種類や機種などを、あるいは、顧客によりメリットのある機種を提案することです。間違っても、いきなりパンフレットを広げ、自社製品のPRをすべきではありません。

仮に、自社製品の中で顧客の課題を解決できる商品がない場合でも、顧客とともに考え、望ましい商品やサービスのイメージを提案することも、提案型営業の重要な役目です。

重要な顧客との関係づくり

提案型営業を実践する場合、心がけなければならない点は、顧客に商品を売ることよりも、顧客との長期的な関係を築く点に重点をおくことです。売込み型営業では、営業マンは顧客に商品、サービスを売れば目的を達したことになり、双方の関係はそれで切れるのが普通です。

提案型営業では、顧客の悩み、問題の解決のために、顧客の会社の置かれた状況、業績全体の動向、今後の目指すべき経営の方向などを広く、深く把握することが不可欠です。それによって、初めて顧客の願望や要求が浮き彫りされるからです。

そうした過程をたどるには、1度や2度の訪問だけで済みません。何度も顧客のところに通い、話を聞く必要があります。

顧客との接触を重ね、営業マンの方からさまざま質問を投げかけることで、顧客がそれまで意識しなかった潜在的な課題が浮かび上がる可能性もあります。これは、新しいビジネスチャンスの可能性につががります。

提案型営業は、まさにそうした顧客との長期的な関係、継続的な関係を築くことによって、単発的な売り込みではなく、長期のビジネス関係を維持することができるのです。この点が一過性の売込み型営業と根本的に異なる点です。

他部門との連携が重要

売込み型営業では、営業マンひとりの力量が大きくモノを言いますが、提案型営業の場合、他部門との連携が必要になるケースが多くなります。顧客の要望に沿った提案をする場合、それを具体化する商品、技術、サービスが自社にそろっていなければなりません。

現在その準備がなくても、ある程度の期間で準備することが可能になる場合もあります。そうした可能性は、社内の設計・開発部門や製造部門などの協力、情報交換によって得られます。

提案型営業は、会社全体のバックアップがなければ成果を上げることが難しいといえます。

提案型営業の実践の手順

以上説明してきた提案型営業を実践する場合の手順を整理しておきましょう。

①顧客の会社の置かれた状況の把握

顧客の会社がどういう業界、業態なのか、その業界全体の動向をまず把握します。その上で、顧客の会社が直面している課題を突っ込んでヒアリングします。技術開発、商品の売れ行き、会社の組織体制、資金繰り、業績内容、競合相手など、さまざま角度から質問します。もちろん、事前の下調べも欠かせません。経営者のプロフィールなども調べておきましょう。

②顧客とのリレーションシップ

提案型営業では、顧客の本音を引き出すことが重要なポイントになります。顧客が本音で話しをするには、営業マンとの継続的なコミュニケーションが必要になり、そうした過程で、相互の信頼関係が築かれます。顧客とのリレーションシップが築かれて初めて本音の話を引き出すことが出来ます。そのためには、営業マン自身も、自分の営業哲学すなわちモノの売り込みでなく、顧客の課題解決が最終目的であることを本音で伝えることが重要です。

③仮説を立てて問題を掘り下げる

相手との信頼関係ができたら、顧客の抱える課題、問題点について、ヒアリングします。その場合、営業マン自身が、それまでに把握した内容から、自分なりに仮説を立て、「この点はどうですか」「問題はこの部分にあるのではないですか」といった形で、問題を掘り下げ、本質に迫ります。

④課題の整理と選択

問題の本質や課題が浮かび上がったら、それを整理し、それぞれについて、いくつかの解決策を提示します。その解決策の中には、自社の製品、サービスがない場合もあるでしょうが、それはかまいません。また、解決策の選択も顧客の意思に任せます。

せっかく課題解決のための提案をして、顧客が、営業マンの会社の製品・サービスを選択しなかった場合、「それまでの努力が水の泡ではないか」という声が当然出るでしょう。しかし、それはそれ。むしろ、提案型営業の真髄は、最初に述べたように、「モノを売るのではなく、顧客の課題を解決すること」です。

たとえ、顧客が他社の製品・サービスを選択したとしても、そこまで導いてくれた営業マンの努力や、営業に対する見識に大きな感動を覚えるに違いありません。

まとめ

モノがあふれ、多種多様なサービスが氾濫している現在、旧来の営業手法では壁に突き当たっているのが現状です。提案型営業は、顧客とともに課題の解決方法を探り、解決策を提案をすることです。

そうした手法は、長い目でみて顧客との信頼関係を深め、ビジネスを継続させるとともに、新しいビジネスチャンスを開拓することにつながるのです。

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