経営

業務改善を提案する – 業務効率化を実現する方法

業務改善を提案する – 業務効率化を実現する方法

企業経営にとって最大の課題は、市場競争で勝ち残るための競争力の強化といって過言でないでしょう。競争力の強化は、一言で言えば、品質のよい製品・技術・サービスを出来るだけ安く、しかも、迅速に提供することです。そのためには、製造、販売、事務、管理などにおけるそれぞれの部門での業務の効率化が不可欠です。

業務といっても、企業の業種、業態によって、さまざまな形が考えられます。ここでは、そうしたさまざまな形の業務に、共通する基本的な課題や考え方を整理し、改善の方策、効率化のための手法、ステップなどをご紹介します。

生産性を高め、業績向上につながる

企業経営の中で、日常業務の改善を常に念頭に置いていないトップはいないでしょう。しかし、毎日の忙しい業務に追われて、業務改善の取組が従業員に浸透しているかというと、そうした企業は少ないのです。

業務改善が単に、掛け声だけに終わったり、経営トップの精神論に過ぎないケースが多いからです。実は、日常業務の改善は、企業の生産性をあげ、無駄なコストの削減、さらには顧客満足度の向上に大きな効果を発揮するのです。そうした日常業務の改善の積み重ねが企業業績の向上につながります。

業務改善は、場当たり的な取組や、思いつきだけで成果をあげることは出来ません。経営トップを中心に、従業員全体が、業務改善の必要性やその目的などに対する考え方を共有し、きちんとした改善計画、実施のマニュアル等を作成することが必要です。

業務改善計画への3つの準備段階

そこでまず、業務改善計画の作成に当たって、その準備段階として、3つの過程がポイントになります。

①改善の目的・目標の明確化

業務改善計画を何のために実施するのか、を明確にする必要があります。例えば、コスト削減なのか、品質向上による顧客満足度の向上なのか、あるいは、従業員の労働時間短縮なのか、といった改善目標を打ち出します。

もちろん、ひとつだけの目標でなく、いくつかの目標が複合されている場合もあるでしょう。いずれにしても目標が明確でないと、従業員の取組の方向が定まりません。

特に、業務の改善が、個人ではなく、チームを組んで、あるいはプロジェクトでの取組の場合は、チームの人たちのイメージを共有化する必要があります。各人のそれぞれの考えで実施すると、計画は空中分解してしまいます。

②現状分析

業務改善策を作成する場合、まず、現在の業務がどのように行われているかを的確に把握する必要があります。社内における過去の業務改善の経緯の把握、また、同業他社との比較などを行います。

業務上の問題点を、担当者個人としてでなく、客観的な課題として把握することが大事です。

③問題点の洗い出し

問題点の洗い出しは、業務改善における課題の抽出につながります。そのため、できるだけ具体的に、その原因が明らかになるような形で掘り下げます。例えば、「帳票類の提出が遅い」という問題点が出たとします。それだけでは、その要因を把握できないので、「提出の遅い帳票は具体的に何か」まで突っ込んでヒアリングします。

そこから「仮払い清算書が特に遅い」という点が明らかになれば、その対応、改善策を検討します。「清算書提出に期限を設ける」あるいは、「金額に下限を設け、それ以下は領収書清算とする」といった、マニュアル化が可能になります。

業務改善計画作成の3つのポイント

以上のような準備を経て、業務改善計画の作成に入ります。業務改善計画の作成には3つの重要なポイントがあります。

①業務遂行のための優先順位をつける

②ワークフロー管理を導入する

③業務の標準化(マニュアル作成)を実施する

これらのポイントについて、具体的に説明していきましょう。

①業務遂行のための優先順位

日常における会社の業務には、営業であれ人事・総務であれ、さまざま業務があり、その中には「明日までに作成しなければならない企画書」「月末の経営会議までに作成する報告書」など、期限のついた業務が大半です。

当面の期限がなくても、会社の業務である以上、ある程度の目安があるはずです。そうした業務をこなしていく場合、多くの企業でみられる従業員の作業は、「取り組みやすい仕事から着手する」「社内評価の高い仕事を優先する」など、従業員の個人的判断で取り組むケースです。

業務は、会社のために遂行するものであり、会社がやってほしいと考える業務と、自分のやりたい業務、取り組みやすい業務とは必ずしも一致しません。むしろ、自分としては気が進まないが、会社にとっては大変重要な業務である場合が多いのです。

そこで、会社の業務として、その優先順位をつける必要があります。優先順位のつけ方は、縦軸に重要度、横軸に緊急度を示すマトリクス法が効果があるでしょう。

重要度と緊急度によって仕切られた4象限の範囲の中に、それぞれの業務を区分けします。マトリクス法によって、さまざまな業務の重要度と緊急度が一目瞭然となります。

マトリクス法で業務を区分けしたら、重要度、緊急度の高い第1象限の業務をまず優先することはいうまでもありません。次いで、重要度はあまり高くないが、緊急度の高い第2象限の業務を実行します。
その後に、緊急度がそれほどでもないが、重要度の高い業務、緊急度、重要度いずれもそれほど高くない業務の順に実施します。

このように、会社の業務は、緊急度を優先して仕事の段取りを運ぶことが大切です。

②ワークフロー管理の導入

マトリクス表によって、業務の優先度が明確になったら、次はワークフローの管理です。
ワークフローとは、複数の担当者がネットワークを経由して業務を行う際に、それを円滑に進めるために担当者間で受け渡す文書や情報の流れを指します。ワークフローの管理の中には、業務の流れ以外に、業務の自動化も含まれます。

会社では、さまざまな業務手続が日常的に行われています。例えば、稟議書の提出、休暇届け、経費の精算などがあります。こうした業務手続を、定型化し、電子的に行えるようにして業務の流れを効率的に管理できるようにするのが、ワークフローの基本的な考え方です。ワークフロー管理を導入することによって、業務の効率が大幅にアップします。

具体的な効果としては、業務の時間短縮が期待できます。ワークフロー管理の導入によって、文書のやり取りを何度も行うことなく、業務がスムーズに運びます。書類の記入ミスや紛失による作業のやり直しなどもなくなります。

また、ワークフロー管理によって、書類作成が定型化・電子化されるので、担当者名などの項目を何度も書類に記入・入力する必要がなく、無駄な記入・入力時間を短縮できます。

さらにワークフロー管理によって、業務の管理工数を削減したり、重複した作業のムダを排除することもできます。また、業務の流れや担当責任者の履歴が、社内で共有化できるので、作業のミスや不正なども迅速に把握することができます。

ワークフロー管理の効果を高めるには、社内的にいくつか考慮すべき点があります。

日常業務の自動化

例えば、管理職の経費の精算に際して、1万円以下の経費は、申請書の提出が必要でない会社の場合、それに相当する管理職のデータを一括承認することで申請や決裁者の負担を減らすことが可能になります。

作業ノウハウの共有化

作業ノウハウの共有化も業務効率化の点で見逃せません。従来、従業員が個人的に蓄積していた作業ノウハウを、ワークフロー管理の中で共有化することで、誰でも簡単に作業を行うことが出来るようになります。

業務上のボトルネック解消

業務上のボトルネック解消にも注意を向けたいものです。日常業務では作業の流れに目詰まりを起こしている場合がよくあります。その場合、具体的にどの部署、工程に要因があるのかをチェックするためにワークフロー管理が重要となります。

③業務の標準化(マニュアル作成)

マニュアルとは、仕事の手順書であり、指示書です。マニュアル作成によって、担当に配属された新人であっても、すぐに仕事に取り組めます。また、先輩や上司による業務指導の時間、労力が削減され、業務を円滑に実施できます。標準化すべき業務としては、仕事の役割分担、苦情対応、教育訓練、人事労務管理などが適しているでしょう。

マニュアル作成のポイントは、利用目的を明確にし、誰が読んでも理解できるようにします。また、手順が具体的、体系的に示されていることが大切です。こうしたマニュアル作成によって、仕事のやり方を口頭で伝えるよりも、誤解がなく、基準がはっきりしているので、従業員の業務手順の共有化が可能となります。

マニュアル作成と業務の標準化は、従業員のスキルのばらつきをなくし、人材育成のスピードアップを促すことによって、労務コストの節減に役立ちます。

まとめ

以上、業務効率化、改善の具体的な提案をご紹介しましたが、それを実施するためには、社内環境の整備が大前提になります。企業の業務改善の中では、多くの場合、とくに事務部門の改善、効率化が遅れています。事務、管理部門は営業や販売、製造などと違って直接利益を生まないため、効率化がどうしても後回しになるケースが多いためです。

しかし、これまで述べたように、事務、管理部門の効率化こそ、コストを下げ、収益を生む余地の大きい部門なのです。そのためにも、経営トップを先頭に、従業員が一体となって、業務改善に取り組む、社内環境づくりが欠かせません。

組織のコミュニケーションを図り、業務の標準化すなわちマニュアル化を推進して、業務のムダをなくす取組が重要となります。

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